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【何が違うの!?】魅力的な演奏と好まれる演奏を処理流暢性で考える

2020年1月29日心理学・脳科学, ピアノ教育, コンクール, 演奏, つぶやき, CD

コンクール審査員や先生方に評価される演奏と、なんだかよく分からないけど感動したり惹きつけられる演奏というのは同じなのだろうか…?

このような疑問を持ったことはありませんか?

結論から言うと、一般的な先生や審査員から好まれる演奏と心が動く魅力的な演奏には違いがあります。

これは、処理流暢性というものが関係していると考えられます。この記事では、好まれる演奏、魅力的な演奏について、処理流暢性がどう影響しているのかを深掘りしていきます。

この記事で分かること

●演奏と処理流暢性について
●好まれる演奏と魅力的な演奏の違い
●魅力的な演奏家の紹介

※心理学の専門家ではありませんが、論文を読んで演奏や指導と審査のこれまでの経験から考察しました。そんな一意見として読んで頂けると幸いです。

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魅力的な演奏と好まれる演奏の違い

好ましく感じる演奏と魅力的な演奏の違いは、処理流暢性という心理学の研究から説明することができます。

その前に…「処理流暢性」ってなんだ?と思ってますよね。

まずは処理流暢性についてからお話していきましょう。

処理流暢性とは

処理流暢性とは、脳が情報を処理しやすい、しにくい、好み、評価、また真実性に大きく関わっているというものです。

なんだか難しそうですが、簡単に言うと…

●処理流暢性が高い=分かりやすいもの
多数に好まれる。真実だと思う。疑いなくすっと入ってくる

●処理流暢性が低い=分かりづらいもの
玄人ウケする。疑われる。気づきが多くなる

というバイアスが人にはかかってしまうということです。(※バイアスっていうのは偏った思い込みのことです。)

魅力的な演奏と好まれる演奏の違いを説明するのに、処理流暢性という心理がどう関わって、どういう違いがあるのでしょうか。

処理流暢性の高さについて

例えば、世間では小難しいクラシック音楽よりも、キャッチ―で誰でも口ずさめる歌謡曲の方が、より多くの支持を得ていますよね。そしてすぐに飽きられてしまう。これが処理流暢性の高いものの特徴といえます。

ここではポピュラー歌謡曲はさておき、小難しいとされるクラシック音楽の演奏において、どのような演奏が好まれるか否かという点でお話していきます。

処理流暢性の検証

処理流暢性を確かめる実験においては、視覚的なことで検証された論文がいくつかあります。

その検証では、パッと見てわかり易いもの(処理流暢性が高いもの)は好まれる傾向があるがミスは気づかれにくく、乱雑でわかり難いもの(処理流暢性が低いもの)は人が疑いをもって見るため色んな気づきがある、ということが分かっています。

そして分かりやすいものは飽きやすいという面があり、分かりにくいものは素養の高い人や富裕層に好まれる傾向があるということも分かっています。

また音声言語の検証論文によると、処理流暢性の高い発話には、えーっと、あのー、のような言葉の時間稼ぎ(フィラー)が少なく、処理流暢性の低い発話にはフィラーが多くて、どちらの話し方が人の心に残るかと言うと、フィラーが多い方だという結果が出ています。

これは処理流暢性の低い方が人が色んなことを感じ取ったり思ったりするという視覚的実験の検証とも一致しています。

このフィラーを音楽に当てはめると、

フィラーが少ない演奏=ミスのない流暢な演奏
フィラーが多い演奏=独自の間と音楽の演奏

という違いだと言えます。処理流暢性の高さについて、まとめるとこんな感じです。

処理流暢性【高い】

●パッとみてわかりやすい
●ミスに気づきにくい(だまされやすい)
●飽きられやすい
●フィラーが少ない
●ミスのない流暢な演奏

処理流暢性【低い】

●乱雑で分かりにくい
●疑われやすい(気づきが多い)
●玄人や富裕層に好まれる傾向がある
●フィラー多め
●独自の間と音楽のクセ強めの演奏

コンクール審査員や先生に評価される演奏

では、処理流暢性の高さによる演奏が、審査や先生からの評価にどう影響しているのかを考えていきましょう。

処理流暢性の高さによる演奏と評価の違い

上記の処理流暢性の内容から、高い演奏を「好まれる演奏」、低い演奏を「魅力的な演奏」と定義します。

●処理流暢性の高い演奏(好まれる演奏)
処理流暢性が高い演奏は、技術も音楽も誰が聴いても悪くは思わず減点されないため、コンクールでは残りやすいと言えます。優等生タイプの演奏ですね。先生や審査員から評価されている演奏の多くがここに当てはまっています。

●処理流暢性の低い演奏(魅力的な演奏)
処理流暢性の低い演奏は、間が独特であったり、クセが強かったり、好みのバラツキが激しくツッコまれる要素の多い演奏であると言えます。しかしそれが何故か人を惹きつけるという部分であることも確かです。

審査員や先生の中には、多少技術に問題があったとしても魅力的に感じる演奏の方を高く評価する人も勿論います。

しかし一般的に処理流暢性の高い演奏の方が減点率が低いため、総体的には好まれる演奏の方が評価される傾向があります。

評価について

最近では審査する人も演奏家であったり、演奏家でありながら先生をする人も増えてきているため、一昔前ほどコンクール入賞する演奏が定型化することは減ってきているように思います。

国際コンクールなどのダントツ1位は、逆に圧倒的に人を惹きつける何かが評価されるため、処理流暢性は高くもあり、そして絶妙に低い部分も持ち合わせていると考えられます。

評価している審査員や先生の多くはこういうことには気づかず考えず、直感的に好ましいと感じる演奏を無意識に選択してしまいます。

また、ある人にとって好ましいと定義づける演奏を魅力的な演奏であるとリンクしている人も多いため、実際のところ、この論争は難しいと思われます。

処理流暢性の低い個性的で魅力的な演奏に対する評価へのリスク

処理流暢性の低い個性的な演奏を評価するのは、評価する側がよほど自分の音楽表現が確立されていたり、また世間に大きく認知されていない限り、好ましいと評価することはリスクを伴います。

有名なエピソードは…

アルゲリッチがショパンコンクールの審査で、ポゴレリッチを合格させなかった他の審査員に対し、怒って「彼は天才!」と言い残してショパンコンクールの審査をおりて帰ってしまった…という話。

アルゲリッチほどの人だから審査を降りる事も話題の一つとなったり、ポゴレリッチに対する評価への影響力もありますが、一般的な先生や審査員がこれをやってしまうリスクはかなり高い…のは想像がつきますよね。

好まれる演奏が良いのか・魅力的な演奏が良いのか

どちらが良いというのはありませんが、どのような演奏が好まれる演奏なのかは知っておいた方が良いと思います。自分の演奏の評価がどういうものかの指標になります。

好まれる演奏、魅力的な演奏というのは、教育視点か芸術視点かの違いなので、自分が持っている感覚で良いと思います。

しかし演奏の目的によっては好まれる演奏という視点は必要な場合もあります。

コンクールに通過する、受験を成功させる、などある一定量の教育視点が必要な場で演奏しなければならないのであれば、どういう演奏が評価されるのかは指針と要素の一つです。

まとめ

魅力的な演奏と好まれる演奏を処理流暢性という心理的な切り口でお話しました。

  1. 処理流暢性の高い演奏 好まれる演奏
  2. 処理流暢性の低い演奏 魅力的な演奏

人の心に届くという意味では、魅力的な演奏に到達するのが理想ですね。

さいごに、処理流暢性が低く舞台上で何か降臨したんじゃないか!と感じる3大ピアニストをご紹介しておきますね。おすすめCDも合わせて♪

処理流暢性低めのクセと魅力がたっぷりな演奏ピアニスト

彼らの音楽は処理流暢性はかなり低く、間や音楽の捉え方のクセは強いです。自由奔放に演奏しているように聞こえるにも関わらず、実際には楽譜の通りという不思議な、そして魅力的な演奏です。

イーヴォ・ポゴレリチ
夜のガスパールに衝撃!オンディーヌもスカルボもそこに何かがいる!と感じるすごい演奏です。


ケマル・ゲキチ
ライブで聴いた時に衝撃が!いるはずのないフランツ・リストが舞台に降臨してきました。とにかくライブのエネルギーがすごいピアニストです。


ミハイル・プレトニョフ
マジ神…としか例えられない。人の五感…いや第6感にまで触れる異次元の演奏。音が図形になって広がる感覚をはじめて感じたピアニストです。とある研究によると、プレトニョフの演奏は癒しレベルマックスの1/f揺らぎが半端ないそうですよ!


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参考文献

J-Stage 
知覚される乱雑さと知覚における処理流暢性の関係
見づらい方が見つけやすい?
音声コミュニケーションにおける非流暢性の機能

Togetter
処理流暢性ってなに?


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