オケスコアを読むとピアノ曲の理解度がぐっと上がる
ピアノを演奏する時に見る譜面は大譜表ですが、右手と左手で演奏するピアノの便宜上、2段の5線内に音を書いているにすぎない作品が多くあります。
たとえピアノ曲であったとしても、音楽を理解し演奏をより立体的に構成する上で、オケスコアのリーディングは欠かせないようですね。ではどの作曲家が特にそうなのでしょうか。以下を見ていきましょう。
第3位 R.シュトラウス
各音域に当てはまるべき楽器の特徴的な音がしばしば配列されています。ドラマティックな和声と音の上下動の幅が広いですが、音域、音型による記譜も、室内楽曲であってもオーケストラリダクション譜のような書かれ方をしています。
特徴的なのは、金管楽器であろう音っぽい音列の書かれ方。
第2位 J.ブラームス
ピアノ作品はピアノの音スティックに描かれていますが、木管や弦楽器の音域とそれを想像できる音型などは、演奏に工夫が必要です。内声に複雑に織り込まれているラインをどのような響きと音色で演奏するかで、ブラームスの音楽の表情はかなり変わってきます。
またコンチェルトのリダクション譜とスコアを並べた時、木管と特に低弦の扱いはピアにスティックに弾いてしまうと全く音楽にならない書かれ方がされています。
第1位 M.ラヴェル
この作曲家のオーケストレーションほどすごいものはいないのでしょうか。ピアノ曲も自身で何曲かオーケストレーションしています。ピアノ独奏曲も立体的な設計図のような楽譜なので、オケ曲のスコアでラヴェルが良く使う手法などを知っておくと、より立体的に音楽をイメージすることができます。
またオケとピアノの両方の楽曲が存在するものについては必須です。
ツィガーヌのピアノパートはオケスコアから楽器を拾い上げるだけで、音楽の幅がすこぶる広がります。そして有名なのはムソルグスキーの展覧会の絵のオーケストレーション。ラヴェルの作品ではありませんが、このスコアはピアノソロで演奏する時には、立体的な音楽や音色のイメージが数倍以上に膨れる事間違いなし。対読むべきものであると言えます。
番外
チャイコフスキー
チャイコフスキーのスコアは、パッと見た時に音のイメージをするのに時差があります。しかし、オーケストラで音を鳴らした時に、客席にサラウンドに音が聞こえるようなオーケストレーションがなされています。舞台芸術の台本といった感じのスコアです。
ドビュッシー
ドビュッシーのスコアは、ピアノ譜とあまり受ける印象が変わりません。それがオケで演奏したときに3Dに聴こえる面白さがあります。ドビュッシーはピアノ楽曲も楽譜上から見るからに立体的な造りになっているからかもしれません。
同時代のラヴェルの譜面が設計図のようであるとすれば、ドビュッシーは絵画的な印象を受けます。
まとめ
ピアノ演奏を聴く機会においてのほとんどが、ピアノらしいピアニスティックな演奏です。ピアノを演奏するのだからそれは当然ですが、オーケストラとの経験が豊富であるピアニストは、直感的に音を立体的に捉える習慣がついていて、シンフォニックな音楽づくりをしており、音色のパレット数、バランス感覚の桁が違います。
普段、オケとの共演はなかなか難しい事ですが、音を聴き、スコアを読むことによって、より豊かな音色作りに努めることはとても大切なことです。