その一言が練習のやる気を奪う【アンダーマイニング効果】
今回の記事は、褒め方の影響についてのお話です。
「内発的動機づけに及ぼす報酬の効果」
という論文を踏まえ、レッスンや家での練習で褒めることの逆効果についてのお話です。
以前に当サイトでも 褒めるレッスンの落とし穴 という記事で、褒めはキケンであるという内容を書いていますが、それをさらに裏付けるものとなっています。
褒めの効果は大きく2つあります
- アンダーマイニング効果
- エンハンシング効果
今回の記事では、アンダーマイニング効果にスポットをあてていきます。
- どういったタイプの子が褒められたらサガるのか
- NGな褒め
これらについて深掘りしていきます。
その一言で練習のやる気を奪っています
その一言で
練習のやる気を奪っています
【アンダーマイニング効果】
論文内の実験では大きく2つのタイプの子がどういう褒められ方をした時にどうなるか、という事が書かれています。
【2つのタイプ】
- 内発型
- 外発型
【効果の検証】
- 言葉で行動を褒める
- 報酬を与える・成果を褒める
- 何もしない
アンダーマイニング効果とは
Wikipediaには以下のように説明されています。
アンダーマイニング効果(アンダーマイニングこうか、英: undermining effect)またはアンダーマイニング現象(アンダーマイニングげんしょう、英: undermining phenomenon)は、内発的に動機づけられた行為に対して、報酬を与えるなどの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気)が低減する現象である。例えば、好きでプレイしていたゲームに金銭的な報酬を与えられると、やる気がなくなってしまうなど。抑制効果ともいう。
引用元:Wikipedia
内発型と外発型タイプについて
内発型と外発型をもう少し詳しく説明していきます。
- 自ら学びたい、練習したいという欲求がある
- 自ら課題を見つける
- ご褒美をもらうために練習する
- 叱られないために練習する
ご褒美(外発的動機)をもらうために、自ら練習する(内発的動機)が高められることもあります。例えばコンクールなどで賞を取るためという動機があって、練習を頑張ろうという内発的動機に影響がある事をエンハンシング効果といいます。
言葉で褒める
言葉の褒めには2種類あります。
- 行動を褒める
- 成果を褒める
2の成果を褒めるのは、報酬を与えられるのと同じなので、ここでは行動を褒める事とします。
言葉で褒めた場合、内発的、外発的どちらもパフォーマンスは良くなるという結果です。
報酬を与える・成果を褒める
報酬を与えることによって起こった事
- パフォーマンスが落ちる
- 報酬がないとやらなくなる
特に内発的な子には顕著にパフォーマンスの低下がみられています。
何もしない
何もしないと何も変わらない。
という結果です。
褒められたらサガるタイプ(アンダーマイニング効果がでやすい)
内発的な動機で練習ができている人には、NGな褒めをしてしまうとパフォーマンスが落ちてしまいます。
外発的な動機で練習する子には、一時的にパフォーマンスが上がったとしても、すぐに下がるという結果になっています。
- 自分で次々に曲を練習してくる
- 新しい練習方法を見出してくる
- 編曲や作曲をしてくる
- やりたい!が強い
- 曲の研究などをしてくる
こういうタイプには、ご褒美より行動の褒めと出来ることをどんどんやらせるという方法がよさそうです。
どちらにしても、エンハンシング効果狙い以外の外発的な動機…ご褒美や罰というのは、パフォーマンス向上にはまったく意味がないということです。
特にNGな褒め
内発的動機で練習できる子に対して、ご褒美を上げてしまうのがいちばんパフォーマンスに影響があります。
また、叱ったり先生に従う、親に従う事に対しての褒めや叱りは、まったくもってよろしくありません。
- これを練習したらお小遣いをあげる
- 出来たらシールを貼ってあげる
- 才能があるという褒め方
- 賞を取ったという褒め方
- 先生のいう事を守ったという褒め方
よくありがちな褒めですね。これらは全く褒めとしてのポジティブな効果はありません。
まとめ
自発的にやる気がある場合は、間違った褒めは逆効果であるという、アンダーマイニング効果につてのお話でした。
また、褒められることに困惑する…と言う人は、内発的な傾向が強いので、無駄な褒めは毒にしかなりません。耳栓をして自分のやりたいこと、やろうとすることに集中することが大切です。
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参考文献
- J stage やる気と脳 ─価値と動機づけの脳機能イメージング
- J stage 「内発的動機づけに及ぼす報酬の効果」